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2023年の参加イベントを振り返る

はじめに

2023年が終わろうとしている*1.年末だからといって何か特別なことがあるわけではなく単なる数字の変化に過ぎないのだが,年中行事を作って何かを祝おうとする雰囲気を感じ取るとどうしても年末感が出てくる.特別な日を決めることで,人間生活における日常の狂気を祭事で鎮めようということなんだとおもう.

2023年も相変わらずCOVID-19が猛威を振るっていたが,2023年の中盤あたりからは(少なくとも社会全体の流れとしては)一応終息に向かっているということになっている.その流れの中で,大人数が集まるような大規模イベントは徐々にコロナ以前の規模に戻ってきた.例えばスポーツ観戦の声援などは,ほとんどコロナ以前と変わらない規模に戻っているのではないかとおもう.そういう事情もあって,筆者自身が参加するイベントも多くなった.大規模イベントはある意味で「祭り」のようなものでそれぞれに特別感があり,それぞれに感想がある.将来振り返ったときに感動を想起できればいいなという期待も込めて,一年の節目に参加イベントの振り返りをしたいと考えた.というわけで,本記事の目的は2023年のイベントを振り返ってアーカイブすることである.筆者が,大人数が集まるイベントに定期的に参加するようになったのは2021年中ごろだったとおもうが,いつのまにか2年が過ぎてしまった.それでもまだまだ新参ではあるのだが......

参加イベントの振り返り

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 UNIT LIVE! ~R3BIRTH R3VOLUTION~』DAY. 1, DAY. 2 (1月14日15日)

虹ヶ咲のUNIT LIVEのトップバッターはR3BIRTHだった.『UNIT LIVE & FAN MEETING』のR3BIRTH公演は観られなかったので,ユニットライブとしては初めてのR3BIRTHだった.会場の音響も相まってかなり盛り上がれた.2022年に『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! 虹が咲く場所』が終わったこともあって,いわゆる充電期間にユニットライブをやってくれたこともよかった.

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 UNIT LIVE! ~A・ZU・NA LAGOON~』DAY. 1 (2月4日)

A・ZU・NAの単独公演である.ちょうど『5th Live! 虹が咲く場所』が終わって少ししたあたりで,優木せつ菜・中川菜々のキャラクターボイスを務める楠木ともりの降板が発表された.

優木せつ菜・中川菜々役 楠木ともり降板のお知らせ | ラブライブ!シリーズ Official Web Site

つまり,本公演は楠木ともりが優木せつ菜としてステージに立つ最後のライブである.ちょうど声出しが解禁されたのもあって筆者としてはほぼ初めての全編声出しライブだった.堂々とコーレスができるのは感動だった.ラストとアンコールの『Love U my friends』『Just Believe!!!』『TOKIMEKI Runners』は強く印象に残っている.

TrySail Arena Live 2023 ~会いに行くyacht!みんなであそboat!』 DAY. 2 (2月5日)

TrySailの単独公演である.『Live Tour 2021 "Re Bon Voyage"』には参加していないので,単独公演に参加するのは初めてである.声出しができない中でのライブだったということで,トロッコを使って会場全体を動き回るというコンセプトの公演だった.『華麗ワンターン』からのセットリストがすごかった.アルバム『Re Bon Voyage』に収録されている曲の披露もあった.個人的に『マイハートリバイバル』と『Good Luck Darling』が好き.

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 UNIT LIVE! ~QU4RTZ Fluffy Magic~』DAY. 2 (3月19日)

QU4RTZの単独公演である.席がかなり良くて,アリーナの10列目ぐらいの位置だったと記憶している.『UNIT LIVE & FAN MEETING』で『未来ハーモニー』のアコースティック ver. を披露したこともあって,何かやってくれるのではないかと期待していた.『虹色Passions!』と『夢がここからはじまるよ』のアコースティック ver. を聴けてよかった.

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 にじたび! TOKIMEKI FAN MEETING TOUR』愛知公演 DAY. 2 夜公演 (5月14日)

もともと『にじたび!』は東京公演に行こうと思っていたのだが,チケットが当たらなかったので愛知公演に行った.『にじたび!』は全体を通して,優木せつ菜・中川菜々のキャラクターボイス林鼓子に変更になってからはじめてのライブだった.『DIVE!』が披露曲だったのだが,かなり圧倒された.『わちゅごなどぅー』は初めて生で聴いた.フリコピが楽しい.ファンミーティングということで曲数は少なめだったが,声優のトークパートも面白くてよかった.

セントラル・リーグ公式試合『読売ジャイアンツ v.s. 東京ヤクルトスワローズ 14回戦 東京ドーム』 (8月1日)

この試合は読売ジャイアンツと『ホロライブ』とのコラボ試合だった.東京ドーム周辺にパネルが設置されていたり,場内アナウンスを博衣こよりが担当したり,『闘魂こめて』を『ホロライブプロダクション』所属のタレントが歌ったりとかなり気合が入ったコラボだった.試合後にはYAGOOによるノーバンチャレンジがあったりと最後まで楽しかった.試合は投手戦であまり面白くはなかった.

TrySail Live Tour 2023  "SuperBloom"』DAY. 1, DAY. 2 (8月12日13日),『TrySail Live Tour 2023 Special Edition "SuperBlooooom"』

アルバム『SuperBloom』が発売されたこともあってのツアーである.TrySail単独としては久しぶりの声出しライブだった.TrySailのライブは1曲目から盛り上がる曲が連発されるので本当にすごい.声も出すし跳ねるしでライブが終わった後は疲労困憊だった.でも楽しい.『ひかるカケラ』が聴けてよかったとおもったら,実はかなり長い間披露が無かったらしい.筆者は新参なのだが,その瞬間に立ち会えてうれしくなった.

『異次元フェス アイドルマスター★♥ラブライブ!歌合戦』 DAY. 1, DAY. 2 (12月9日10日)

アイマスラブライブの奇跡の合同フェスである.正直言って互いの曲を披露しあって終わりかなぁとおもっていたのだが,完全にいい意味で予想を裏切られた.アイマスラブライブもある程度曲は分かるので,どちらのパートでも盛り上がれるしアイマスラブライブの越境もあり新鮮味もあった.いちいち曲の感想を書きたいが長くなりすぎるので割愛.ネットの予想記事をあまり見ていなかったので765 PRO ALLSTARSとμ'sの曲が披露されて完全に面食らってしまった.『READY!!』から『僕らは今のなかで』の流れで号泣してしまった.12月にあったというのもあるが,2023年で一番いいライブだったとおもう.

夏川椎菜 3rd Live Tour 2023-2024 ケーブルモンスター』立川公演 DAY. 2 (12月17日)

アルバム『ケーブルサラダ』がリリースされたということで,アルバムをテーマにしたライブである.席がかなり良く,ほとんど最前だった.生バンドでのライブだったので音圧を全身に受けられてかなり高まる.アルバムを聴いた中だと『メイクストロボノイズ!!!』と『Bluff 2』が特に好きだなあとおもってたのだが,生バンドだとさらに良かった.『I Can Bleah』はサビが楽しい.

おわりに

こうして振り返ると,生活に支障が出ない程度にほどよく付き合えているのではないかとおもう.『異次元フェス』に参加してみて,知らない曲があっても出会いを求めていろいろなライブに行ってみるのも良い選択かもしれないとおもった.そういう意味では,フェスはとてもいいと感じた.つまり,来年はいろいろなコンテンツに触れていきたいということである.

 

以上

*1:記事執筆時点で2023年12月18日.

エデン条約編感想:彼女たちの青春の物語

『ブルーアーカイブ』メインストーリー「Vol.3 エデン条約編」を読み終わったので感想を書く*1

bluearchive.jp

 

キヴォトスの「日常」は平和で幸福に満ち溢れたものではない.それはむしろ,紛争と権力闘争が渦巻く混沌としたものだ.エデン条約編では,そのことがより明確に描かれる.そのような世界でも,キヴォトスに生きる生徒たちは自身の未熟さを受け入れ,それでも懸命に今を,そして未来を希望を抱いて生きようとする.先生はその導き手となるのである.エデン条約編において「希望」は主要なテーマの一つだろう.

エデン条約編は

第1章「補習授業、スタート!」

第2章「不可能な証明」

第3章「私たちの物語」

第4章「忘れられた神々のためのキリエ」

の計4章からなる.簡単に内容を振り返る.

 

エデン条約とはトリニティとゲヘナの和平条約である.トリニティとゲヘナには長年の敵対関係があった.エデン条約は,その敵対関係を解消しようとする二者の間で結ばれる.ところで,キヴォトスにおいて「大人」の存在は珍しい.それは各学校の上層部も同様で,学校の実質的な最高意思決定機関は生徒によって構成される生徒会である.したがって,エデン条約は,トリニティの代表である生徒とゲヘナの代表である生徒の調印によって有効となる.エデン条約編は,そのエデン条約をめぐる生徒(と暗躍する「大人」)の闘争を描いている.物語の主な舞台はトリニティ総合学園だ.それは,トリニティが「総合」学園であることに関係する.トリニティは,過去にキヴォトスに存在した派閥の和解の象徴として存在する.トリニティは古くに存在したいくつかの学園が統合されたものである.その意味で,「総合」である.トリニティの創立にあたってその場から排除された派閥が存在した.それは,アリウス分校である.アリウス分校は,トリニティ創立にあたっての学園統合に反対し,迫害を余儀なくされた.その後はアリウス自治区に移り,突如現れたキヴォトス外の「大人」であるベアトリーチェによって戦闘訓練やトリニティ,ゲヘナに対する憎悪教育が行われる.そんな中でティーパーティのひとりである聖園ミカはアリウスとトリニティの和解を望み,たびたびアリウスに接触していた.ミカは自身の感情のために,アリウスとともに百合園セイアを襲撃するが,ベアトリーチェの策略に翻弄され徐々に壊れていく.一方,エデン条約の調印式当日,アリウス分校の生徒たちはトリニティとゲヘナ両陣営を襲撃する.こうして,アリウス分校とゲヘナ,トリニティをはじめとする先生陣営の戦争へと突入する.実は襲撃の裏ではゲマトリアが糸を引いており,物語終盤では,それに気づいた生徒と先生でゲマトリアを撃退する.その中でアリウス分校の生徒たちと聖園ミカは,「大人」によって施された教育を脱し,希望をもって「日常」を歩もうとする.

 

物語でも言及されているが,すべてはミカの計画によるセイアの襲撃から始まっている.アズサによるセイアの襲撃がなければ,裏切り者を退学させる手段としての補習授業部も設立されなかった.補習授業部は,白洲アズサにとっての「エデン」である.トリニティとアリウスの和解の象徴としての存在であるアズサが,桐藤ナギサの目に留まり補習授業部に招待(強制招集)されたのは偶然の産物であるが,結果としてアズサの「希望」の最後の一押しになった.アズサは虚しい世界に絶望していなかった.コンクリートに咲く花のように,虚しい世界でも抵抗し続けていればいつか希望があると考えていたのである. 阿慈谷ヒフミとの出会いは,アズサの好きなものとの出会いでもある.トリニティで出会った仲間を守ることは,戦闘と憎悪に満ちたアリウスで生きてきたアズサにとって,かつての仲間であるアリウススクワッドと敵対するには十分すぎる理由であっただろう.アリウス分校の生徒でアズサと対照的に描かれるのが錠前サオリである.サオリはアズサの虚無に対する抵抗に気付いていた.それに気づいていながら,ベアトリーチェの謀略に従って調印式の襲撃のために駒として利用されるのは悲劇的だ.「大人」への抵抗をやめなかったアズサとは対照的である.サオリは,救われない絶望の中で幸福を求めることをやめてしまった.サオリは,自身の不幸の原因をトリニティとゲヘナに向けるのである.ミカは,サオリと似ている.ミカの境遇はアリウス分校の生徒とは違う,いわゆる”世間知らずのお嬢様”である.それゆえに,いたずらで襲ったセイアが死んでしまったと知り,反逆者として投獄されたとき,世界の残酷さに耐えられず希望を失ってしまった.ミカは,自身の不幸の原因はサオリであると考えるようになる.”公平に不幸を”という考えは,ハッピーエンドによって打ち砕かれる.サオリはアツコを救うことによって,ミカは窮地に陥った救われるお姫様として.讃美歌を歌いサオリたちを赦すミカの姿はさながら天使である.ミカはサオリたちのために讃美歌を歌う.

 

虚しい世界で楽園を探す行為は途方もない苦痛を伴う.その探求は,存在するかどうかわからないものを追い続けることを意味するからである.虚しさを受け入れ,楽園の存在証明の不可能性を受け入れながら冷笑的に生きることができれば,ある種の諦念の下でそこそこに生きていける.そこに「希望」はない.エデン条約編で「先生」が提示したものは,存在証明の不可能性に対して,なおその存在を希求することである.楽園や幸福は普遍的ではない.しかし,そうであるといえるものの一端は,彼女たちが示してくれている.アリウススクワッドや聖園ミカのように幸福を求める,そのために生きることが各人の Blue Archive なのである.

たとえ全てが虚しいことだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。

おわり

*1:読書感想文のようなもので特に考察とかはない.真面目に考察しようとすると古代キリスト教の知識が必要で,筆者は持ち合わせていない.

生塩ノアが見ているものはなにか

生塩ノアについて少し気になることがあるのでメモ程度に書き留めておく.生塩ノアが先生に対して何を考えているのかということ.こういう見方もできるよねというだけでさしたる根拠があるわけではない.私は,生塩ノアは単に先生に恋愛感情を抱いているのではないと考える.

 

先生とノアの関係について考える前に,早瀬ユウカについて少し触れておく.先生とノアの関係を考えるうえで,ユウカの存在は大きい.ユウカは,先生に対して特別な感情を抱いている*1.そして,『On your mark@millennium』の冒頭を見るにユウカの先生に対する思いにノアは気付いている.ノアは,ユウカの感情は恋心なのだと確信している(と私は思う).ユウカの先生に対する想いはしばしばノアによって弄ばれる.恋心を抱く高校生とその友人の反応としてはごく一般に見られるじゃれあいだが,私は少し性質の違うものなのではないかと考える.すなわち,ノアの,先生に対する妬みの反応なのではないかと考える.ノアがユウカに想いを吐露する場面がある.

ノア「私、ユウカちゃんのこと大好きですよ。」

ユウカ「まあ、それは知ってるけど……。」

グループストーリー セミナー“価値の証明(1)”

ユウカは,生徒会を運営する仲間として「大好き」という言葉を受け取ったのであろう.ここでは,より言葉通りに,ユウカへの恋愛感情に寄った想いとして解釈する.この解釈のもとでは,ノアのユウカに対するからかいは,ユウカが先生に対して向けている恋心に似た感情が自分(ノア自身)に向かないことへの嫉妬の表出であると考えられる.ノアのユウカに対する想いを念頭に置いて絆ストーリーを再読してみる.

 

絆ストーリーでノアが曇りガラスに綴った詩がある.綴られた言葉は,

「Qui aimes-tu le mieux, homme énigmatique, dis ?」

一番好きなものは何かい、いってごらん謎めいた人よ

これは,ボードレール『異邦人』からの引用である*2.「謎めいた人」は先生を指しており,一番好きなものは何かという問いは,先生が生徒の中で一番を選べるか?という投げかけであるというのが主流の解釈なのではないかと思う*3.私は,この詩はノア自身への問いかけなのではないかと考える.いくつか根拠を挙げる.1つ目として,ノアがこの詩を胸に秘めるようになったのは,先生がキヴォトスに来るよりずっと前だろうと推定できるからである.明確に述べられているわけではないが,この詩から先生への恋愛感情を読み取るには先生と出会ってからの時間が短すぎるだろう*4.2つ目に,ノア自身がミレニアムでの自分の立ち位置を模索していることである.モモトークで,ミレニアムの技術革新に自分が貢献できていないのではないかという悩みを先生に打ち明ける.詩について考えることで「異邦人」にノア自身を重ねていると思える.ノアが引用した詩は,ノア自身の迷いを表すものなのだ.

ではなぜこの詩を先生と共有したのだろうか.それは,ノアのユウカへの想いが密接に関わっている.ノアは,ユウカに対して恋愛感情に近い想いを抱いている.一方,ユウカは先生に対して恋心を抱いている.ノアにとって,ユウカの恋の的になっている先生は羨望の対象である.羨望の対象である先生に自分の迷いを共有することで,ノア自身の気持ちに整理をつけようとしたのである.ノアにとっての先生は,ユウカにとって特別であるという点で特別であるのだと思う.

 

Twitterなどを見ているとノアが先生に恋愛感情を抱いていると考えている人が多いが,もう少し複雑なものがあると思った.題に対する結論はない(え?).生塩ノアさん,私のママになってください.

*1: ユウカ(体操服)の絆ストーリーなど

*2:和訳は,https://poesie.hix05.com/Baudelaire/Spleen/spleen01.etranger.htmlから.

*3:データを取ったわけではないので私の妄想である.しかし,https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/221005bに分かるように,この解釈が存在しないわけではない.

*4:先生とノアの初対面は『On your mark@millennium』の冒頭であることがノア自身から語られている.シャーレの当番が初めてということからも,『On your mark@millennium』からそれほど時間は経っていないと考えられる.