移ろい

Tweetの延長

生塩ノアが見ているものはなにか

生塩ノアについて少し気になることがあるのでメモ程度に書き留めておく.生塩ノアが先生に対して何を考えているのかということ.こういう見方もできるよねというだけでさしたる根拠があるわけではない.私は,生塩ノアは単に先生に恋愛感情を抱いているのではないと考える.

 

先生とノアの関係について考える前に,早瀬ユウカについて少し触れておく.先生とノアの関係を考えるうえで,ユウカの存在は大きい.ユウカは,先生に対して特別な感情を抱いている*1.そして,『On your mark@millennium』の冒頭を見るにユウカの先生に対する思いにノアは気付いている.ノアは,ユウカの感情は恋心なのだと確信している(と私は思う).ユウカの先生に対する想いはしばしばノアによって弄ばれる.恋心を抱く高校生とその友人の反応としてはごく一般に見られるじゃれあいだが,私は少し性質の違うものなのではないかと考える.すなわち,ノアの,先生に対する妬みの反応なのではないかと考える.ノアがユウカに想いを吐露する場面がある.

ノア「私、ユウカちゃんのこと大好きですよ。」

ユウカ「まあ、それは知ってるけど……。」

グループストーリー セミナー“価値の証明(1)”

ユウカは,生徒会を運営する仲間として「大好き」という言葉を受け取ったのであろう.ここでは,より言葉通りに,ユウカへの恋愛感情に寄った想いとして解釈する.この解釈のもとでは,ノアのユウカに対するからかいは,ユウカが先生に対して向けている恋心に似た感情が自分(ノア自身)に向かないことへの嫉妬の表出であると考えられる.ノアのユウカに対する想いを念頭に置いて絆ストーリーを再読してみる.

 

絆ストーリーでノアが曇りガラスに綴った詩がある.綴られた言葉は,

「Qui aimes-tu le mieux, homme énigmatique, dis ?」

一番好きなものは何かい、いってごらん謎めいた人よ

これは,ボードレール『異邦人』からの引用である*2.「謎めいた人」は先生を指しており,一番好きなものは何かという問いは,先生が生徒の中で一番を選べるか?という投げかけであるというのが主流の解釈なのではないかと思う*3.私は,この詩はノア自身への問いかけなのではないかと考える.いくつか根拠を挙げる.1つ目として,ノアがこの詩を胸に秘めるようになったのは,先生がキヴォトスに来るよりずっと前だろうと推定できるからである.明確に述べられているわけではないが,この詩から先生への恋愛感情を読み取るには先生と出会ってからの時間が短すぎるだろう*4.2つ目に,ノア自身がミレニアムでの自分の立ち位置を模索していることである.モモトークで,ミレニアムの技術革新に自分が貢献できていないのではないかという悩みを先生に打ち明ける.詩について考えることで「異邦人」にノア自身を重ねていると思える.ノアが引用した詩は,ノア自身の迷いを表すものなのだ.

ではなぜこの詩を先生と共有したのだろうか.それは,ノアのユウカへの想いが密接に関わっている.ノアは,ユウカに対して恋愛感情に近い想いを抱いている.一方,ユウカは先生に対して恋心を抱いている.ノアにとって,ユウカの恋の的になっている先生は羨望の対象である.羨望の対象である先生に自分の迷いを共有することで,ノア自身の気持ちに整理をつけようとしたのである.ノアにとっての先生は,ユウカにとって特別であるという点で特別であるのだと思う.

 

Twitterなどを見ているとノアが先生に恋愛感情を抱いていると考えている人が多いが,もう少し複雑なものがあると思った.題に対する結論はない(え?).生塩ノアさん,私のママになってください.

*1: ユウカ(体操服)の絆ストーリーなど

*2:和訳は,https://poesie.hix05.com/Baudelaire/Spleen/spleen01.etranger.htmlから.

*3:データを取ったわけではないので私の妄想である.しかし,https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/221005bに分かるように,この解釈が存在しないわけではない.

*4:先生とノアの初対面は『On your mark@millennium』の冒頭であることがノア自身から語られている.シャーレの当番が初めてということからも,『On your mark@millennium』からそれほど時間は経っていないと考えられる.